はじめに
『遅咲きの恋』に登場する山田涼太は、
強く主張するタイプではありません。
それでも、物語を読み進めるうちに、
彼の存在が人間関係に静かな変化をもたらしているように感じられる場面があります。
なぜ彼は「支えることができる人」として映るのでしょうか。
本記事では、心理学の研究と作品内の描写をもとに、
その理由をいくつかの視点から整理していきます。
共感は「寄り添うこと」だけではない
心理学では、共感(empathy)は一つの働きではなく、
- 相手の感情を感じ取る側面
- 相手の状況を理解する側面
の両方を含むとされています。
参考論文
Decety, J. & Jackson, P. (2004)
The functional architecture of human empathy
https://www.researchgate.net/publication/51369194_The_Functional_Architecture_of_Human_Empathy
涼太の関わり方は、
相手の感情に巻き込まれるというよりも、
距離を保ちながら理解しようとする姿勢
として描かれているようにも見えます。
たとえば、
「……実は、けっこう緊張してる。こんなふうに誰かと会うの、すごく久しぶりで」
この言葉には、
相手を安心させるための言葉というよりも、
自分の状態を正直に差し出す姿勢
が感じられるかもしれません。
「安全基地」という関係のかたち
人間関係において、安心できる距離感を説明する概念として、
「安全基地(secure base)」
があります。
参考文献
Bowlby, J. (1988) A Secure Base
これは、
- 常に近くにいることではなく
- 必要なときに戻れる存在
を意味するとされています。
涼太の関わり方は、
この「安全基地」に近いものとして読める場面もあります。
たとえば、
「約束ではなく、続けることだと思ってる」
という言葉からは、
強く引き寄せる意思ではなく
関係を続けることへの静かな意志
が感じられます。
それは「支える」というより、
同じ場所に立ち続ける姿勢
とも言えるかもしれません。
支える人が壊れにくい理由
対人支援の分野では、
支える側の疲弊(バーンアウト)
が問題になることがあります。
参考文献
Maslach, C. & Leiter, M. (2016)
Understanding the burnout experience
一般に、
- 相手の問題を背負いすぎる
- 自分の役割を過度に引き受ける
といった関わり方は、
疲弊につながりやすいとされています。
その点で涼太は、
- 相手の人生を引き受けすぎない
- 自分の立ち位置を保っている
ようにも見えます。
それは冷たさではなく、
関係を長く続けるための距離
として捉えることもできるかもしれません。
「強さ」ではなく「持続する関係」
涼太は、いわゆる強いリーダーではありません。
しかし、
「俺、真奈美さんのことが……好きです」
という率直な言葉からは、
感情を隠さない姿勢
それでも相手を変えようとしない態度
がうかがえます。
ここにあるのは、
相手をコントロールしない関係
それでも関係から離れない意思
とも考えられます。
年の差恋愛との関係
年齢差のある関係については、
海外の研究でも分析が行われています。
参考論文
Lee, W.S. & McKinnish, T. (2017)
The Marital Satisfaction of Differently-Aged Couples
https://docs.iza.org/dp10863.pdf
この研究では、
- 関係初期の満足度が高い傾向
- 時間とともに変化が生じる可能性
が指摘されています。
その中で重要になるのは、
関係をどう維持していくか
という点です。
涼太の
「続けること」
という姿勢は、
このテーマと重なる部分があるとも考えられます。
おわりに
山田涼太という人物は、
心理学的に説明できる側面を持ちながらも、
完全に言い切れる存在ではないようにも感じられます。
むしろ彼は、
支えるとは何か
関係を続けるとは何か
という問いを、静かに投げかけてくる存在なのかもしれません。
その答えは、
読者それぞれの中にある
とも言えるでしょう。
参考文献
- Decety, J. & Jackson, P. (2004)
https://www.researchgate.net/publication/51369194_The_Functional_Architecture_of_Human_Empathy - Bowlby, J. (1988) A Secure Base
- Maslach, C. & Leiter, M. (2016) Understanding the burnout experience
- Lee, W.S. & McKinnish, T. (2017)
https://docs.iza.org/dp10863.pdf
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