登場人物
佐々木 圭吾(ささき けいご)
年齢: 50代後半
職業: 特別養護老人ホーム「緑風苑」施設長
性格: 厳しくも温かい、責任感の強いリーダー。
背景:
- かつては現場で介護士として働いていたが、ある利用者を最期に看取ることができなかった後悔 を抱えている。
- 「介護は個人ではなく、環境とチームで支えるもの」という信念を持ち、施設運営に携わるようになった。
- 亮に対して特に厳しく接するが、それは彼の可能性を見ているから。
高橋 由紀(たかはし ゆき)
年齢: 40代前半
職業: 介護福祉士・佐々木の右腕的存在
性格: 明るく、面倒見が良い。現場経験が豊富で、佐々木を支えながら職員たちの相談にも乗る。
背景:
- 佐々木とは長年の付き合いで、彼の過去を知る数少ない人物。
- 亮の指導役でもあり、彼の成長を温かく見守っている。
- 施設運営に関わる一方で、「現場の介護職員としての視点」も大切にしている。
藤田 亮(ふじた りょう)
年齢: 30代前半
職業: 介護施設「緑風苑」相談員
性格: 穏やかで優しいが、他人との関係に慎重で、自分の気持ちを表に出すのが苦手。
背景:
- 幼少期、父の暴言に怯えながら育ち、家族との距離を保っていた。
- 不登校の経験があり、社会に適応するのが難しかったが、兄と共に介護の仕事を始める。
- 「緑風苑」の佐々木施設長のもとで相談員として働き、利用者やその家族の悩みを聞く中で成長していく。
- 佐々木の厳しさに反発しつつも、彼の言葉の奥にある想いを少しずつ理解していく。
藤田 健太(ふじた けんた)
年齢: 30代前半
職業: 介護福祉士・デイサービス「希望の家」職員
性格: 責任感が強いが、不器用で感情を表に出すのが苦手。
背景:
- 幼少期、アルコール依存の父・健一に振り回され、不登校を経験。
- 「父のせいで人生が狂った」と思い込み、長年社会との距離を置いていた。
- 涼太の言葉を受け、介護の道を志す。
- デイサービス「希望の家」で働きながら、利用者との関わりを通じて少しずつ人との向き合い方を学ぶ。
第1章:佐々木の厳しさと亮の葛藤
「亮、お前はいつまで受け身のままでいるつもりだ?」
佐々木は、資料を机に置きながら亮を見つめた。
「……すみません」
「謝る必要はない。だが、相談員というのは単なる聞き役じゃないぞ。お前は、利用者がどう生きるべきかを一緒に考える立場だろ?」
「……はい」
亮は唇を噛んだ。
彼は「相談員になれば人と関わるのが楽になる」と思っていた。
しかし、現実は違った。
第2章:過去の影
「施設長って、昔は介護士だったんですね」
休憩中、亮はふと高橋由紀に尋ねた。
「そうよ。でも、ある出来事があって……施設長は、今の道を選んだの」
「ある出来事?」
高橋は少しだけ沈黙し、そして語り始めた。
「施設長が若い頃、ある認知症の利用者さんを担当していたの。家族にも見放されて、施設で最期を迎えた。でもね……施設長がいない夜に、一人で亡くなったのよ」
「……」
「それが、ずっと彼の中に残ってるんだと思う」
亮は、佐々木がなぜこれほどまでに「人を支える」ことにこだわるのか、少し理解した気がした。
第3章:健太との再会
「お前も、だいぶ変わったな」
久しぶりに再会した兄・健太が、少し笑いながら言った。
「……俺も、やっと自分の道が見えてきたのかも」
「まぁ、俺もまだまだだけどな」
健太は、デイサービスでの経験を話しながら、亮に問いかけた。
「施設長は厳しいけど、お前のことを見てくれてるんだろ?」
「……ああ、そうみたいだ」
亮は、少しだけ前を向いた。
第4章:亮の成長、佐々木の変化
ある日、利用者の家族が「家で見るのはもう無理です」と涙ながらに話していた。
「どうしたらいいかわかりません……」
以前の亮なら、ただ「そうですね」と共感するだけだった。
しかし、この日、彼は違った。
「大丈夫です。私たちがしっかりとサポートします」
「お母様が安心して過ごせる環境を、一緒に作っていきましょう」
その言葉に、家族は少しだけ安心した表情を浮かべた。
遠くから見ていた佐々木は、わずかに微笑んだ。
「……亮、お前もようやく自分の言葉を持つようになったな」
最終章:灯る光
夕暮れの「緑風苑」。
亮は、施設の窓から差し込む夕陽を見つめていた。
「……施設長」
「なんだ?」
「俺、これからもここで頑張ります」
佐々木は、無言で頷いた。
そして、背を向けたまま、静かに言った。
「期待してるぞ」
亮は、まっすぐ前を向いた。
それぞれの場所で、それぞれの役割を果たす4人。
彼らの未来には、もう沈まぬ影ではなく、灯る光があった――。
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